
東京急行電鉄/長野電鉄8500系/秩父鉄道7000系
1.概要
8500系は東京急行電鉄が1975年から製造した電車である。1986年にかけて、田園都市線に10両編成38本と5+5両編成2本が投入された。東横線や新玉川線でも使用された。2003年に田園都市線の5+5両編成が大井町線に転用され、5両編成4本として使用された。2003年から廃車が生じており、2019年に大井町線から撤退した。2020系の増備に伴って、田園都市線から撤退する見込みである。廃車となった車両は秩父鉄道や伊豆急行、長野電鉄に譲渡された。
長野電鉄8500系は2005年から東急電鉄から8500系を譲受した電車で、2009年にかけて3両編成6本が投入された。
秩父鉄道7000系は2009年に東急電鉄から8500系を譲受した電車で、3両編成2本が投入された。
2.外観の特徴
2.1.車体構造の差異
製造時期により車体形状に差異が存在する。1975年から1980年に製造された車両(前期形)は、8000系に準じた車体構造であり、屋根のカーブ形状は8000系と同様である。そして、1981年に製造された車両(中期形)は、軽量車体に変更され、屋根のカーブ形状と屋根上の絶縁部の位置が変更されている。なお、中期形は中間車のみが製造されている。また、1982年から1986年に製造された車両(後期形)は、中期形の屋根のカーブ形状はそのままに、屋根上の絶縁部の位置は前期形に準拠している。
2.2.改造による差異
1994年から一部編成を除いて、種別行先表示器が幕式から3色LED式(3C-LED)に交換された。2005年以降はフルカラーLED式(FC-LED)に交換された編成が存在した。2002年から一部編成を除いて先頭車の前面にスカートが設置された。
長野電鉄のT6編成と秩父鉄道の7002Fは中間車が種車であり、先頭車は非貫通構造の運転台が新設された(先頭化改造)。
2.3.塗装の差異
製造時は全車両が前面に赤帯を加えた塗装(以下、●標準色)であった。1986年頃に8635Fが広告貸切車の「TOQ-BOX号」として、側面にも赤帯が追加された塗装(●TOQ赤帯)に変更された。後に「TOQ-BOX号」は8634Fに変更され、塗装も引き継がれた。また、1987年には8637Fが東急ケーブルテレビジョンによる広告貸切車「CATV号」として、前面と側面に青帯の塗装(●TOQ青帯)に変更された。2編成とも数度に渡って車体装飾が変更されたが、現在は車体装飾を終了している。2006年には8614Fが「伊豆のなつ号」として、伊豆急行8000系に準じた塗装(●伊豆色)に変更されている。2006年頃には大井町線の車両の前面帯が赤と黄色のグラデーション(●大井町色)に変更されている。長野電鉄に譲渡された車両は、製造時の標準色のまま使用されている。秩父鉄道7000系は前面帯が緑色と黄色のグラデーション(●秩鉄色)に変更されている。
3.バリエーション一覧
No.
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現状
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特徴 |
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A01 | 現存 | 前期形/●標準色 |
A02 | 現存 | 前期形/●標準色 [3C-LED] |
A03 | 現存 | 前期形/●標準色 [3C-LED][スカート] |
A04 | 消滅 | 前期形/●標準色 [FC-LED][スカート] |
A11 | 消滅 | 前期形/●伊豆色 [3C-LED][スカート] |
A12 | 現存 | 前期形/●秩鉄色 [3C-LED][スカート] |
A21 | 現存 | 前期形/●標準色 [3C-LED][先頭化改造][スカート] |
A22 | 消滅 | 前期形/●標準色 [3C-LED][先頭化改造] |
A31 | 現存 | 前期形/●秩鉄色 [3C-LED][先頭化改造][スカート] |
B01 | 消滅 | 中期形 |
B11 | 現存 | 中期形/●標準色 [3C-LED][先頭化改造][スカート] |
B12 | 消滅 | 中期形/●標準色 [3C-LED][先頭化改造] |
C01 | 消滅 | 後期形/●標準色 |
C02 | 消滅 | 後期形/●標準色 [3C-LED] |
C03 | 現存 | 後期形/●標準色 [3C-LED][スカート] |
C04 | 消滅 | 後期形/●標準色 [FC-LED][スカート] |
C11 | 消滅 | 後期形/●TOQ赤帯 |
C12 | 消滅 | 後期形/●TOQ赤帯 [3C-LED] |
C13 | 消滅 | 後期形/●TOQ赤帯 [3C-LED][スカート] |
C14 | 消滅 | 後期形/●TOQ赤帯 [FC-LED][スカート] |
C21 | 消滅 | 後期形/●TOQ青帯 |
C22 | 消滅 | 後期形/●TOQ青帯 [3C-LED] |
C23 | 現存 | 後期形/●TOQ青帯 [3C-LED][スカート] |
C31 | 消滅 | 後期形/●伊豆色 |
C41 | 消滅 | 後期形/●大井町色 [3C-LED] |
C42 | 消滅 | 後期形/●大井町色 [3C-LED][スカート] |
C43 | 消滅 | 後期形/●大井町色 [FC-LED][スカート] |
4.各バリエーション解説
A01 | 前期形/●標準色 |
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前期形の落成時の姿。種別行先表示器は幕式であり、スカートは設置されていなかった。後の改造や廃車によって、この姿の車両は減少したが、田園都市線の8606Fは2020年の廃車までこの姿であった。現在は8506号車と8606号車が東急テクノシステムに保存されている。



A02 | 前期形/●標準色 [3C-LED] |
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前期形の種別行先表示器3色LED化後の姿。1994年から一部編成を除き、種別行先表示器が3色LED式に変更された。長野電鉄が2005年と2006年に譲受したT1~T4編成がこの姿で使用されている。



A03 | 前期形/●標準色 [3C-LED][スカート] |
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前期形のスカート設置後の姿。2002年から2005年にかけて、一部編成を除きスカートが設置された。2021年の廃車まで、この姿で使用された。2009年に長野電鉄が譲受したT5編成がこの姿で使用されている。



A04 | 前期形/●標準色 [FC-LED][スカート] |
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前期形の種別行先表示器フルカラーLED化後の姿。2005年から一部編成がフルカラーLED式に変更された。前期形は8616Fのみが該当した。2008年に3色LED式に変更され、この姿は消滅した。
A11 | 前期形/●伊豆色 [3C-LED][スカート] |
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「伊豆のなつ号」の8614Fの姿。2006年に「伊豆のなつ号」として、8614Fが塗装変更された。2020年に廃車され、この姿は消滅した。



A21 | 前期形/●標準色 [3C-LED][先頭化改造][スカート] |
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長野電鉄T6編成のデハ8506の姿。2009年に譲受したT6編成は、全車が中間車から改造された。先頭化改造により新設された運転台は非貫通形である。現在もこの姿で使用されている。



A22 | 前期形/●標準色 [3C-LED][先頭化改造] |
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スカートを撤去した長野電鉄デハ8506の姿。2016年1月の事故によりスカートを破損し、復帰後はスカートを未装備で運行された。現在は再設置され、この姿は消滅した。



B01 | 中期形 |
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中期形の姿。中間車のみが製造された。屋根上の絶縁部の幅が狭いことが特徴である。2020年に廃車され、この姿は消滅した。



B11 | 中期形/●標準色 [3C-LED][先頭化改造][スカート] |
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長野電鉄T6編成のデハ8516の姿。2009年に譲受したT6編成のうち、デハ8516のみ中期形を改造種車としている。先頭化改造により新設された運転台は非貫通形である。現在もこの姿で使用されている。



B12 | 中期形/●標準色 [3C-LED][先頭化改造] |
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スカートを撤去した長野電鉄デハ8516の姿。2010年11月の事故によりスカートを破損し、復帰後はスカートを未装備で運行された。2011年頃に再設置され、この姿は消滅した。
C02 | 後期形/●標準色 [3C-LED] |
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後期形の種別行先表示器3色LED化後の姿。1994年から種別行先表示器が3色LED式に変更された。2002年から2005年にかけてスカートが設置され、この姿の車両は消滅した。
C03 | 後期形/●標準色 [3C-LED][スカート] |
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後期形のスカート設置後の姿。2002年から2005年にかけてスカートが設置された。現在も田園都市線の車両はこの姿で使用されている。



C04 | 後期形/●標準色 [FC-LED][スカート] |
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後期形の種別行先表示器フルカラーLED化後の姿。2005年から一部編成がフルカラーLED式に変更された。後に3色LED式に変更され、この姿は消滅した。
C11 | 後期形/●TOQ赤帯 |
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「TOQ-BOX号」として、車体装飾と側面にも赤帯が追加された8634Fと8635Fの姿。1986年頃に8635Fがこの姿になったが、後に8634Fに変更された。1994年から種別行先表示器が3色LED式に変更され、この姿は消滅した。
C13 | 後期形/●TOQ赤帯 [3C-LED][スカート] |
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8634Fのスカート設置後の姿。「TOQ-BOX号」である同編成は、2004年頃にスカートが設置された。2005年に種別行先表示器がフルカラーLEDに変更されたが、2008年に再び3色LED式に戻された。2021年に廃車され、この姿は消滅した。



C14 | 後期形/●TOQ赤帯 [FC-LED][スカート] |
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8634Fの種別行先表示器フルカラーLED化後の姿。「TOQ-BOX号」である同編成は、2005年に種別行先表示器がフルカラーLED式に変更された。2008年に前面の種別行先表示器が3色LED式に戻され、この姿は消滅した。



C21 | 後期形/●TOQ青帯 |
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東急ケーブルテレビジョンによる広告貸切車「CATV号」として、前面と側面が青帯に変更された8637Fの姿。1987年に8637Fがこの姿に変更された。1994年以降に種別行先表示器が3色LED式に変更された。
C22 | 後期形/●TOQ青帯 [3C-LED] |
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8637Fの種別行先表示器3色LED化後の姿。1994年以降に種別行先表示器が3色LED式に変更された。2003年頃にスカートが設置され、この姿は消滅した。
C23 | 後期形/●TOQ青帯 [3C-LED][スカート] |
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8637Fのスカート設置後の姿。2003年頃にスカートが設置された。現在もこの姿で使用されている。



C31 | 後期形/●伊豆色 |
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「伊豆のなつ号」のデハ8883とデハ8775の姿。2006年に「伊豆のなつ号」として、8614Fが塗装変更された。中間に組み込まれていた後期形も同様に塗装が変更された。2020年に廃車され、この姿は消滅した。



C41 | 後期形/●大井町色 [3C-LED] |
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大井町線の後期形の姿。2006年に大井町線で使用される車両を対象として前面帯が変更された。前面帯の変更後も一部編成はスカートを未装備であった。なお、行先表示器は3色LED式であった。後にスカートが設置され、この姿は消滅した。
C42 | 後期形/●大井町色 [3C-LED][スカート] |
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大井町線で使用される後期形のスカート設置後の姿。2006年頃にスカートが設置された。後に種別行先表示器がフルカラーLED式に変更され、この姿は消滅した。



C43 | 後期形/●大井町色 [FC-LED][スカート] |
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大井町線で使用される後期形のフルカラーLED化後の姿。2008年頃に種別行先表示器がフルカラーLED式に変更された。2019年までに廃車され、この姿は消滅した。


